音楽鑑賞の記録

ほぼクラシックのcd鑑賞記録です。

オペラ ノイヴィルト:オーランドー マティアス・ピンチャー/ウィーン国立歌劇場管弦楽団(2019年)

NHKBSプレミアム放送(2023年7月9日) 2019年12月18日、20日ライブ

歌劇「オーランドー」(オルランド) 178分
オルガ・ノイヴィルト 作曲
■出演:
オーランドー:ケイト・リンジー
語り手:アンナ・クレメンティ
管弦楽ウィーン国立歌劇場管弦楽団
■指 揮:マティアス・ピンチャー

■収録:2019年12月18日、20日 ウィーン国立歌劇場(オーストリア)

演出:ポリー・グレイアム(ポーリー・グラハム)
衣装:コム デ ギャルソン

ウィーン国立歌劇場150周年記念公演として2019年12月8日に世界初演されたプロダクション。

ブルーレイ(760804)などで商品化されているが、NHKの再放送を視聴した。

原作者、作曲家、脚本、演出、衣装が女性、特に衣装・メイクはコム・デ・ギャルソンがオペラに初登場ということで話題となった。

オペラ鑑賞としての立場から観ると、確かに衣装やメイクは新鮮で面白い。

しかし歌劇作品としてはどうなのか。音楽?効果音?合唱は多少あるが、ソロ歌唱はほとんど印象に残らない。長々と語り手のセリフが続く。

場面転換が多いがとりとめのない情景が続き、多様な引用が放り込まれるだけで、ストーリーは感じられない。最後まで鑑賞するのはなかなか苦痛だった。

この訳の分からなさを分かったような顔をして評価するのが現代劇の楽しみ方なのだろうか。

 

 

 

 

オペラ ディーン:ハムレット ヴラディーミル・ユロフスキー/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(2017年)

NHKBSプレミアム放送(2023年3月13日) 2017年6月30日、7月6日ライブ

歌劇「ハムレット」(全2幕) 164分
ブレット・ディーン 作曲
■出演:
ハムレット:アラン・クレイトン
ガートルード:サラ・コノリー
オフィーリア:バーバラ・ハンニガン
クローディアス:ロッド・ギルフリー
管弦楽ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
■指 揮:ヴラディーミル・ユロフスキー

■収録:2017年6月30日、7月6日 グラインドボーン歌劇場(イギリス)

演出:ニール・アームフィールド
装置:ルフ・マイヤーズ
衣装:アリス・バビッジ

グラインドボーン音楽祭で世界初演されたものをNHKが放送したもので鑑賞。ブルーレイ(OABD7231D)などで商品化もされている。

現代作曲家による新作ということである程度予想はしていたが、全体を通して歌劇というより舞台劇という印象だった。

ほとんど、音楽や歌唱で印象に残るものはなく、そもそも歌うというシーンはあったのだろうか。

原作自体があまりにも有名なためどうしても受け手にマッチするかどうかが評価点になってしまうとは思う。
自分にとってはハムレット役のクレイトンはかなりイメージが異なり受け入れにくかった。

オフィーリア役のハンニガンは流石すぎる演技で、歌唱とは言えない狂乱の場でも素晴らしい所作だった。

音楽を聴いた感触が乏しいためユロフスキー、ロンドンフィルについては特に思うことが見当たらない。

 

 

 

 

 

 

 

ベルリオーズ 幻想交響曲 オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(1963年)

5419760177(Warner)1963年4月23-26日、9月17-18日 セッション録音

クレンペラーが77歳~78歳で録音したもので、名盤の定評高くSACDなど常に再発されている演奏。

元々1999年リマスターの音源CDを持っていたのだが、今回は2023年の192Hz/24bitリマスターで配信されたものをprestomusic.comで購入した。16:15/6:40/18:09/5:03/10:48。 

さすがに192Hz/24bitは2GB超の容量だが、その分1999年リマスター版と比べると音質向上が著しい。

明瞭度・分離度はかなり上がり、ダイナミックレンジはすこぶる広くなった。

おかげで管楽器が鳴らす空間が広くなったようだ。

この曲の性格とクレンペラーの演奏にとってはとてもプラスの効果があるリマスターに感じられた。

幻想交響曲を聴くと、いつもセットでチャイコフスキーのマンフレッド交響曲も聴きたくなってしまう。残念ながらクレンペラーの演奏はないようだが。

余録といってよいのか、オーベール:歌劇『フラ・ディアヴォロ』S.18~序曲
オッフェンバック:喜歌劇『美しきエレーヌ』~序曲も収められているがこちらは1929年のSP時代録音。

 

 

 

 

 

 

オペラ ヴェルディ:椿姫(ラ・トラヴィアータ) ヤデル・ビニャミーニ/ローマ歌劇場管弦楽団(2016年)

U-NEXT配信 2016年5月ライブ

歌劇『椿姫』(全3幕) 142分

ヴェルディ 作曲 
■出演:
ヴィオレッタ・ヴァレリーフランチェスカ・ドット
アルフレード・ジェルモン:アントニオ・ポーリ
ジョルジョ・ジェルモン:ロベルト・フロンターリ
​​■管弦楽ローマ歌劇場管弦楽団
​■指 揮:ヤデル・ビニャミーニ
■収録:2016年5月 ローマ歌劇場

演出:ソフィア・コッポラ
美術:ネイサン・クロウリー
衣装:ヴァレンティノ・ガラヴァーニ、ピエールパオロ・ピッチョーリ、マリア・グラツィア・ キウリ

コッポラがオペラを初演出、衣装はヴァレンティノ、で話題となった演目。

日本でも2018年に同じ公演があり2023年も再演が決まるなど好評だったようだ。また同じく2023年ブルーレイも発売となる。

U-NEXTで「ソフィア・コッポラの椿姫」として配信されていたものを鑑賞した。

まず、映像・光・音響…と字幕が鮮明で非常に見応え聴き応えがある。

演出はコッポラ、美術はクロウリーと映画畑だが、これとヴァレンティノ筆頭の衣装が見事にはまって視覚効果は抜群だ。

1幕では白い階段に黒いドレスのヴィオレッタ筆頭の暗めの色彩のコントラスト、2幕後半ではヴィオレッタだけが赤いドレスでいやが上にもフォーカスされる。2幕前半は純白のヴィオレッタが気高さを感じさせる。視覚的には退屈な場面が続くのだが、風景が変化していく様で心情の変化も表しているようだ。

どうしても注目は視覚要素に行きがちだが演奏も概ね良かった。オケはツヤとハリのある若々しい演奏、ドットは気品があり動作も声も言うことなし、ポーリは1幕では余裕がなく常に指揮を探して目が挙動不審だったがその後は表情は硬いものの声は安定していた。

カーテンコールではコッポラやヴァレンティノも登場、華やかにステージの締めを飾っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アラン・メンケン ノートルダムの鐘(2023年)

2023年6月4日マチネライブ  JR東日本四季劇場[秋]

半年ぶりにミュージカル観劇。ユゴーの原作をディズニーがアニメ化したものを土台に、ディズニーが製作したものを劇団四季が国内上演している。

ディズニーのアニメ版は視聴済みで、ユゴーの原作は未読、という状態で臨んだ。

アニメ版とかなり違う印象を受けたのがフロローとフィーバス。

フロローはプロローグで設定に肉付けがされより深いキャラに、フィーバスはアニメ版では善意ある正義人だったが、こちらはどちらかというと自由人風。

ラストもアニメとは大きく異なり驚いたが、なんとなくユゴーならこんな締め方をしそうだなと感じられた。

それだけでなく、アニメはファミリー向けに編集されたんだなぁと思うほどに、このミュージカルは大人向けだ。
(上演場所の四季劇場[秋]にはおなじく[春]もあり、こちらではアナと雪の女王も上演中。こちらはファミリーが大勢押しかけていた。)

アニメ版では一番心に残ったのはフロローのHellfireだった。
ミュージカル版でも同場面が痛烈な印象を受けたが、カジモド、エスメラルダ…切りがないが切々とした心情を歌うシーンが多く、心に刻まれる。トプシー・ターヴィーデイ、らんちき祭りは意外とあっさりした感。

カジモド役の飯田達郎さんは、もうカジモド=飯田さんでしょというくらいの入れ込みようでとても素晴らしかった。

全体の完成度も大変高く、オペラ座の怪人と同じくらい感極まった。再演が来たらもう一度観に行きたい。

オペラ映画 ヴェルディ:オテロ ロリン・マゼール/スカラ座管弦楽団(1986年)

CSザ・シネマ放送  1986年収録

今日ではほとんど制作されることのないオペラ映画。

これは当時から傑作との評判で、今でもシネマコンサート形式などで上映もされている。かつて日本でもDVDが出ていたが今は流通がないようだ。

歌劇「オテロ」(映画) 122分
ヴェルディ 作曲

■出演:
オテロ:プラシド・ドミンゴ
デズデーモナ:カティア・リッチャレッリ
ヤーゴ:フスティーノ・ディアス
管弦楽:ミラノ・スカラ座管弦楽団
■指 揮:ロリン・マゼール
■監督:フランコ・ゼッフィレッリ

見どころ聴きどころはとにかく豊富。

ドミンゴ・リッチャレッリはともに見栄えのする出で立ちで歌唱も抜群。特にドミンゴは凄まじいハマりっぷり。

そしてゼッフィレッリといえば原作忠実、豪華絢爛。これでもかというロケーション、群衆シーン…。とても今では制作できないだろうと思わせる。これだけやってくれれば説得力は大いに感じられる。

映像は80年代だけに鮮明とは言い難いが、作りは妥協なしで今でも十分に見応えがある。

マゼールスカラ座の演奏は、とかく派手な画面に隠れがちだが、舞台と場面の演出がとてもマッチした編集の効果で、サントラ的な演出効果が非常に高い。制作には相当な苦労があったと推察される。

オペラ単品として捉えると柳の歌など一部カットもあり完璧とはいえないまでも、オペラにそれほど関心が高くない層には非常に入りやすく、こういった試みは続けてほしいもの。

総じてあらゆる点で完成度の高いこの作品を流通から埋もれさせてしまうのは実に惜しい。最近流行りのリマスター商法で復活させるべきだろう。

 

 

 

 

オペラ モーツァルト:偽の女庭師 ディエゴ・ファソリス/スカラ座管弦楽団(2018年)

NHKBSプレミアム放送(2021年5月10日) 2018年10月11日ライブ

歌劇「偽の女庭師」(全3幕) 179分
モーツァルト 作曲
■出演:
代官:クレシミル・シュピツェル
サンドリーナ:ジュリー・マルタン・デュ・テイユ
アルミンダ:アネット・フリッチュ
伯爵:ベルナール・リヒター
ラミーロ:ルチア・チリッロ
セルペッタ:ジュリア・セメンツァート
ナルド:マッティア・オリヴィエーリ
管弦楽:ミラノ・スカラ座管弦楽団ピリオド楽器使用)
■指 揮:ディエゴ・ファソリス

■収録:2018年10月11日 ミラノ・スカラ座(イタリア)

演出:フレデリック・ウェイク・ウォーカー

装置&衣装デザイナー:アントニーマクドナルド
照明:ルーシー・カーター

もともと8KHDR/22.2マルチチャンネル収録された公演を2K/5.1チャンネルにダウンコンバートして放送されたものを視聴した。同内容がブルーレイ(NYDX50160)などで商品化もされている。

自分は初めて聴く演目だが、ダポンテオペラに引けを取らない完成度の高いオペラだ。主要キャストは7人もおり各自のキャラと人間関係はしっかり構成されている。

しかも全員に見せ場・聴かせどころがふんだんにあり重唱も充実。おかげでタイトル役が若干影が薄くなってしまった感はあるが。歌手陣は皆ビジュアル的にも良かった。

ピリオド楽器使用でフォルテピアノも使用され舞台演出も奇をてらわず好印象。一方で、マイクのせいなのか歌唱がときおり遠くあるいは小さく聴こえることもあった。

衣装もとてもマッチしており特にアルミンダは頻繁に衣装が代わりどれも非常に凝っていて綺麗だった。

しかし2幕後半以降、舞台を破壊しまくりそのまま3幕へ移行するがこの辺りの演出が雑になっており、状況や心情が非常に分かりにくくなってしまっているのが残念。観劇前に話の予習が必須だ。

またライティングも横と前からの光源で背景に役者の影が大きく映りこんだりすることが多い。これも何らかの演出意図があるだろうが、2幕のラミーロのアリア以外ではあまり効果的とは感じなかった。