SICX-10018(Sony) 2022年
今年のNHK大河は久々の傑作だった。
食傷気味の戦国と幕末から離れ、しかも源平合戦に主軸を置かれがちなこの時代で、北条義時を主人公としたものとして期待していた。
一方で、脚本三谷幸喜は新選組!は良かったものの真田丸は後半の失速感が強く、がっかりしたものだった。これには馬にも乗れず剣も振れない主役役者の問題もあった。
2020年の麒麟がくるでは、私的大河歴代最高傑作の太平記の脚本池端俊策再びということで大いに期待したが、パシリばかりで内面が見えてこない主人公に、その分失望も大きかった。
今年の鎌倉殿の13人は、やはりコミカルシーンのやり過ぎ感は強いものの、主人公をただの平和主義者としなかった点が筋が通っていてとても良かった。
日本最初の武家政権の基礎固めをやってのけたその筆頭は義時と言ってよい。相当な難題と葛藤に直面し続け、そのときにできるベストの選択を必死にこなしていったと思われる彼の視点は、決して美談にはならないだろう。
しかしそんな義時とその時代を今回のドラマは、正史とされる吾妻鏡からも大きく逸脱せず、うまく説得力あるキャラ・話として昇華できたと思う。なお最終回の家康は全く不要だった。
音楽はヴァイオレット・エヴァーガーデンで名を成したエバン・コール。
放送初回ではあまり良い印象を持たなかった。メインテーマは何となく中国アクション映画っぽく感じ、終盤にドヴォルザークが流れたときは面食らった。
その後もモーツァルト、ヴィヴァルディ、バッハと使われあまり場面にマッチしているとも思えなかったものだ。しかし世間的には話題作りにはなっていた。図らずもモーツァルト、ヴィヴァルディが重なっているが、このアレンジ仕様として最高にハマっているのは映画「SPL2(殺破狼2)」(『ドラゴン×マッハ!』)の陳光榮だ。
だが第47回放送の演説シーンが名場面で、ここにこの一年間の集大成を感じて一気にサントラ購入意欲が生じてしまった。
4CDの完全版はかえって冗長になってしまいそうなので、ベスト盤、しかもこちらはSACD!ということでこちらを購入。
のっけから手のひらを返すが、メインテーマがとにかくカッコいい。解像度が凄まじく、テレビ放送でもマルチチャンネルで聴いていたはずだが…いろいろな音がキレキレで聴こえてくる。
落ち着いた曲群はチェロベースが多く、こちらも本放送時では感じられなかった、しっとりした味わいがあって良い。
「いざ鎌倉!」「鎌倉のために 」はまさに一年の集大成として出来上がったものとして感慨深い。
「大河紀行」は4種収録されているがどのアーティストも良いアレンジ加減で、もっと聴いてみたいと思わされる。
クラシックアレンジ曲の収録はなし。ライナーノーツによると、ドヴォルザークは演出サイドからの要望で、エバン・コールは当初は難色を示したようだ。